「ファー・イーストに住む君へ」

----いわゆる,連作エッセイ? って感じでしょうか?   top   
-1- 1996年,川崎医科大学 研究ニュース 留学報告-i
-2- 1996年,川崎医科大学 研究ニュース 留学報告-ii
-3- 1996年9月 川崎医科大学附属病院 病院広報 「海外の医療事情」
-4- 1997年 冬 川崎学園便り「すずかけ」随筆
-5- 1997年 春 川崎医科大学附属病院 病院広報 「一冊の本」
-7- 1997年 夏 川崎医科大学 同窓会報 助教授就任の挨拶に代えて
-8- 1997年 秋 川崎医科大学 父兄会報 助教授就任の挨拶に代えて
-9- 1997年 秋 川崎学園便り「すずかけ」随筆
-10-(含:-6-) 1999年 初春 川崎医科大学衛生学教室 同門会誌


「鳥取雛送り殺人事件」内田康夫 著

                    ファー・イーストに住む君へ -5-

 作家・内田康夫が生み出した平成の名探偵・浅見光彦の名前は君も知っているだろう.古くは水谷豊や,近年では辰巳琢郎や榎木孝明(天河伝説は映画化もされた)が扮して2時間ドラマでよく放映されているよね.この辺りが題材の作品も「歌わない笛」(玉島と津山が舞台:作陽音大の移転問題がテーマ)「鞆の浦」「讃岐路」など.また,警視庁の岡部警部が活躍するその名もずばり「倉敷殺人事件」など,全国を題材にもう100作品以上が刊行されているよ.ちなみに最新刊は四国坂出も舞台の「崇徳伝説殺人事件」だけれどね.

 そこで,この「鳥取雛送り」.最近の社会派への転換と,いわゆる旅情ミステリーの狭間にあるこの作品は平成3年にノベルで刊行された.舞台は東京と鳥取県用瀬町,若桜町.古くから伝わる雛流しの行事が作品の底流に物悲しくどこか妖しい魅力を醸し出していて,物語も東京の若い刑事の憤死や妖しい尼寺などの舞台装置によって哀惜を実に良く演出している.御老公の印篭の如き兄の刑事局長,女性に弱きしがない居候,罪を憎んで人を憎まぬ姿勢などは,ある種の安心感を読者に与えてくれてもいる.僕はこの作品は浅見シリーズの中でも上位にランクされるものだと思うよ.

 で,3月10日(やっぱり雛だし)に山陽放送で,例のごとく辰巳琢郎主演で放送されたのだけれど,そのTVロケにエキストラで参加して来たよ.丁度,大寒波到来で雪降りやまず,旧暦で行う用瀬町の雛送り(ちなみに今年は4月9日)には少しそぐわなかったね.他に中村あずさや加藤治子が「流し雛のやかた」や千代川の河原で撮影をしていて,僕達は雛送りの行事を見に来た観光客役.監督は雪の止むのを待っていたようで,都合4時間ほど待たされたけれど,最終的に諦めて降雪の中での撮影となった.可哀そうだったのは,雛送りをする役の地元の6歳前後の女の子達で,きれいな着物で着飾って(お母さん方も)それでも4時間ほど待たされたあげく撮影は雪の中.テストと本番は傘もさせずに降り積む大粒の雪の粉が哀れに着物の模様のように暮れなずむ千代川河畔に映し出されていたよ.スタッフはそれでも総勢30人以上.結局,待ち時間のために参加したようなものだったけれど(結局1秒も,画面で1mmも映ってなかったけれど),いわゆる一つの小さな体験ってところカナ.

いずれにしても,浅見シリーズ.推理小説の良心みたいに書き継がれていくのだろう.定番は定番なりの良さを秘めて,今度は僕の郷里の福知山を舞台にしてくれないかなあ.「丹波大江山殺人事件」とかいって.